猫探偵(ショートショート)

猫を探すことだけを仕事にする探偵がいた。その男はどんな猫でも3日以内に探し出した。

新聞やテレビにもたくさんとりあげられ、たくさんの依頼があった。しかしながら男が遠くの地域の依頼を受けることはなかった。

「私は私の住んでいる地域の猫さんたちならば助けることができます。手が届くからです。目が行き届くからです。遠くに住んでいる猫さんたちまで探し出すことは、私にはできません」

その謙虚な態度は地域でも評判を呼び、男には近隣からたくさんの依頼が舞い込んだ。男は野良猫を多数保護しており、野良猫の保護施設をボランティアで運営していた。男の元には今日もどんどん猫が運ばれてくる。

「やあ猫さん、いらっしゃい。ちょっとの間だけど、一緒に仲良くしましょう。」

男は猫たちを丁寧にかわいがり、病気の猫には治療を行った。猫たちはそんな男のことをとても気に入っているようだった。男の携帯にメールが入った。猫の捜索依頼だった。

【アキ・キジトラ雄・赤い首輪(安全装置付き)・体重約4キロ・2週間前に失踪・飼い主の名前・住所・電話番号・数枚の写真】

男はしばらく考えて確認すると飼い主に電話をかけた。

「猫さんの捜索を承ります。まずはアキさんが失踪した住所について確認させていただきます。〇〇町の〇〇丁目あたりで間違いないですね。それとアキさんが動いている動画があったら確認させていただきたいのです。声なんかもわかるともっと良いです。ええ、よろしくお願いします。2-3日探して連絡をさせていただきます。アキさんの好きなおやつなどはありますか? ササミをオーブンでドライしたものですか。あれは私も好きです。かしこまりました。それではまたご連絡させていただきます。精一杯お探しします。」

男はキッチンでコーヒーを飲みながらアキの写真を使ったチラシをデザインした。たくさん印刷して、失踪したアキの家の近隣のポストに入れて回った。男がチラシを配っていると、たくさんの人がそれを熱心に応援した。中には缶コーヒーやお菓子を差し入れする人もいた。男がチラシを配り終えると、家に戻りササミをオーブンで焼いてジャーキーを作った。

3日が経ち、男は猫の保護施設に行った。2部屋目のシェルターの隅の大きなゲージからアキを取り出し、ジャーキーを与えた。作業台で毛並みを整え、丹念に撫でてやった。アキはゴロゴロとのどを鳴らして甘えていた。

「もしもし、アキさんが見つかりましたので、報告をさせていただきます。ええ、あまり弱ってはいないようです。ですが、少し汚れていたのでお風呂に入れてキレイにさせていただきました。アキさん少し疲れているようですから、ササミのジャーキーも差し上げておきますね。ええ、それは安心されたことでしょう、もう心配なされないでください。私もとてもうれしいのです。ええ、わかりました。帰宅される頃にアキさんを送りにあがります。20時頃はいかがですか?かしこまりました。それではそのころに」

男は20時にアキを飼い主のところに送り届けた。飼い主の家はかなり大きかった。家というよりは屋敷といった建物だった。

「アキさんを送りにまいりました」

門に設置してあるインターホンを押して男が挨拶すると、すぐに飼い主が出てきた。

「アキちゃん! 無事で本当によかったわ!あなたがいなくなったら私はもう。探偵さん、本当にありがとう。お時間あったらぜひ上がっていってくださいな」

飼い主はアキを優しく抱きしめて、目に涙をためていた。アキは飼い主の腕から離れると、何事もなかったかのようにゆっくりと歩いて別の部屋へ行った。屋敷の中で男はお茶とお菓子をごちそうになった。捜索料金20万円と感謝の印という名目で30万円のボーナスを受け取った。最初はボーナスを断ったが、さらに金額を増やそううとする飼い主を止めるために無理に受け取った。さらに男の運営する保護猫施設への寄付として、飼い主の法人名義で100万円も振り込まれることになった。男は丁寧にあいさつをして、その家を去った。

「猫さんが健康でいますように」

翌日男の保護能設に、優しい顔をした馴染みの猫泥棒が猫を連れてきた。猫泥棒は男に住所を渡し、男は猫泥棒に金を渡した。男は保度施設で猫たちを大切に大切に保護している。男は猫に囲まれるこの仕事をとても気に入っていた。

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