伊右衛門で暖を取る

飲み会の後は気分が良い。

気分が良いままに、家まで歩いて帰ろうとした。Googleマップは4時間15分ほど歩けば到達できると示していた。遠いが決して無理な距離ではない。朝までには到達可能だ。その日の僕は思い切って歩いてみることにした。

AM1:30。10キロほど歩いたところで、深夜の雨が僕を襲った。濡れた体からどんどん体温が奪われていく。体は震えて体温を保とうとするが全く追いつかない。このままではいけない。僕は雨宿りをすることにした。小屋タイプのバス停があって、そこをベースにすることにした。

持ち物は525mlのペットボトル「伊右衛門」と、iphone(4%)とびしょ濡れのハンカチーフ。僕は思い当たる限りの知人にSOS電話を発信。しかし誰も出ない。充電は残り1%を示していた。1%を使って緊急メッセージ。住所と状況と救助要請を数人に送る。要請を送り終えて数分でiphoneは活動を停止した。

震えはブルブルからガタガタにアップデート。濡れた服はいけないと聞いたことがあったので、パンツを残して全て脱ぎ去った。それでも体は冷えていく。僕は羞恥心よりは命を取る選択をする男なのだと気づいた。

一口だけ残した伊右衛門を飲みほすと、尿意があった。辺りに公衆トイレは無い。僕は文明人として立ちションなどという、野蛮なスタイルの排尿はあまりしたくないタイプだ。僕はサントリーに申し訳ないなと思いつつも、伊右衛門に放尿した。そして気づく、掌から伝わるその暖かさに。推定37°前後。僕はなぜか泣きそうになりながら伊右衛門で暖を取った。

まだ薄暗い朝、少しイラついた母さんが迎えにきて僕は一命を取りとめたのだった。

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