コーヒー豆をローストしたり、南京錠でズボンをロックしたり

僕はつい先日コーヒー豆を焙煎する男になった。

するとどうだろう、1皮どころか7皮くらいめくれた良い男になった気分になった。僕はこれまで、500円~/100gくらいの豆をロースターで買っていた。100gだと、1杯が15gなのでおよそ6杯のコーヒーが抽出できる。1日に2杯くらい飲むとすると、1ヶ月に900g必要だ。そうするとコーヒー豆にかかる費用は4500円になる。そこまで多くない額に思えるが、自分で焙煎するとぶっ飛ぶくらい安くなる。

高品質の豆で1500円/kgくらいだ。焙煎すると大体3割くらい減ってしまうが、どう考えたって安い。今回の僕の豆の場合は200円/100gくらいだ。焙煎はフライパンでできてしまう。4分くらいで信じられないくらい良い香りが家を包みはじめる。少々豆の皮で周りは散らかるが、10分ほど焙煎は完了する。

焼いた豆を知り合いの焙煎士に見てもらった。僕のローストした豆は「焼きムラが多く、表面がシワシワでピンと張っていないから失敗作」ということだった。

「ああ、そうなの」と悲しげな僕と豆。

2日ほど寝かして飲んでみると、普通に美味しい。もしかするとコーヒー豆ってのは本当はテキトーに焙煎してもそこそこ美味しいものなのに、すごく難しいものだとみんな思い込んでしまっているのかもしれない。

話をコーヒーから脱線させる。

この間ベルトがどうしても見つからない時があった。どこを探してもない。あんなことは初めてだった。あれこれと2分くらい考えた。そして僕は閃いてしまった。

南京錠で留めちゃえばいいじゃないと。

僕は小ぶりな南京錠を使って、隣あったベルト穴をキュッとくっつけた。ズボンはベルトで締めたくらいしっかりホールドされた。まさに読み通りと言ってもいい。僕はそのまま外に繰り出した。時々金具が腰にグリグリとあたって痛い。でもどこかクラシックでお洒落で、時々南京錠を見ては満足していた。ベルトの代わりに装備した南京錠は、不思議と人を惹きつけた。

「今日はベルト忘れちゃって、南京錠なんです。テヘヘ」

その日話した全ての人が腰につけた南京錠に笑ってくれた。中には感心をした人さえいた。南京錠ってすごいなって心から思った。

あの頃の僕は、この南京錠に鍵がついていないことなんて気づきもしなかったんだ。南京錠は黒いズボンの隣あったベルト穴を、今もしっかりとロックしている。

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