12歳と70歳の神と釣り

みなさんの家の田植えは終わったかな。うちはバッチリ終わった。

そういえば釣りを始めてから1ヶ月ほどが経った。3回ほど行ったが全く釣れやしない。なんせ僕は20分くらいしか我慢ができない。そんな初心者の僕だったが、今日ついに魚を釣り上げることに成功した。

今日の僕はノスタルジックな港でサビキ釣りをすることにした。サビキ釣りってのはいっぱい針が付いていて、小魚をいっぱい釣る感じのやつだ。

到着してすぐ、一人のおじいちゃんがアジを釣り上げていた。

「今群れが来ているから、隣にきて釣りなさい」

僕は早速おじいちゃんの隣に座って釣りを始めた。

「近すぎるで」

僕も薄々そんな気がしていた。すいませんね、なんて言いながら、少し離れる。おじいちゃんの竿にはガンガンヒットする。僕はおじいちゃんの引き立て役でしかない。目の前に小アジは山ほどいるのに、僕の竿には一切かからない。

「わしは帰るから、ここでしばらく釣ってみんさい」

僕はよく釣れる場所をもらって、ぼーっと待った。待てども待てども釣れやしねえ。僕はそろそろ帰ろうかなと思っていた。

その時少年とおじいちゃんのほっこりペアがやってきた。

「釣れてますかー??」

「いや全然釣れないんだ、そもそも僕はまだ魚を釣ったことがないんだ」

「そうなんだ!初めてなんだ!」

少年は元気に準備をはじめて、糸を垂らした。3秒ほどでヒット。すぐにまた糸を垂らしてヒット。その後もどんどん釣れる。なんだ天才か。これが才能ってやつなのか。僕は諦めたような表情で水平線をぼーっと眺めていた。

「おじいちゃん、あの釣ったことないお兄ちゃんかわいそうだね。助けてあげよっか」

「歳下に教えられるのを嫌う人もおるけえ気をつけなきゃいけんよ。でも助けてあげたいなら助けてあげなさい」

僕を助けるか助けないかの会議が聞こえてきた。

「お兄ちゃん、この餌使ってみるといいよ。ねっおじいちゃんいいでしょう?」

「よろしいんですか??」

「ああ、ええよ一緒にやりましょう。餌は自由に使いんさい」

お隣に神が降臨した。しかも2柱の神だ。

「そうだ、仕掛け見せてよ!(僕の釣り竿の仕掛けをチェックする少年)これダメだね、他のないの??」

僕は1ヶ月前に適当に買った仕掛けの中から、一つ取り出す。どうやらここの港では、赤ではなく黄色い仕掛けの針が良いみたいだ。

「これだ。これに付け替えるね。」

少年は手際よく仕掛けを付け替えてくれた。そしてそのまま餌をカゴに入れて、海に糸を垂らすところまでしてくれた。

「ここで待ってたらすぐかかるよ」

少年の神が予言した。5秒ほどで竿先が震えた。そして僕は少年の予言通り初めて小アジを釣った。

「釣れたら楽しいだろう。初めてがボウズじゃかわいそうだけえな」

「お兄ちゃん、釣り楽しいでしょう?」

「はい、おかげさまで楽しいです!」

その後も神々と僕は釣り続けた。神々は合わせて50匹以上。僕は20匹を釣り上げた。神々に話を聞くと、隣の市に住む小学6年生と70歳ということだった。神は隣の市におられたのだ。尊い。

僕は神々が帰られるということだったので深くお礼を申しあげ、持っていたジュースを供えた。

「また一緒に釣ろうね〜」

少年は助手席からそう言っておじいちゃんと軽トラで帰っていった。僕は「お気をつけて」と手を振って見送った。

帰ってアジの下処理をした。手が魚くせえが、とっても運の良い一日だった。

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