小さな親切大きなお世話

僕はショッピングモールで用を足していた。隣で用を足していたジャケットを着た知り合いの岩田さん(偽名)が、手を洗わずに外に出ていくのをみてとても嫌な気持ちになった。

僕は大学生の頃に英語の授業で執筆した論文 “Dangerous of Toilet”を思い出す。記録によると、僕は鳥取駅のトイレを監視し、手を洗わずに出てきた知らない男達83人にインタビューをしている。

「あなたはなぜ手を洗いませんでしたか?」

正直どうでもいいような一般教養的英語の授業に対してこんなに熱意を持って取り組んだのは僕一人だけだった。自慢だが大学での成績はほとんどAだ。このアンケートで無回答(無視)が一番多かったのは言うまでもない。見ず知らずの男に手を洗わなかったことを咎められたように感じてしまったのだろう。意外に多い意見で「ブツに触っていないから」という物があった。僕はバスケットボールをしていたからかどうかは分からないが、左手をそっと添える派だ。このノーハンド派の男たちの意見には少なからず驚かされた。狙いが定まらないし、格納する時はどうするんだろうかと思う。雫というか、余露(ヨツユ)を出し切ってしまうときに触らないとはどういうことなんだろうか。どうやったって目に見えない飛沫がかかるじゃないか。

そんなトイレの近くにある100円ショップで買い物をしていて、iphoneを落としてしまった。僕が回収するよりも早く、親切なおっさんが拾ってくれた。僕はそれをできる限り阻止したかった。なぜなら、さっき手を洗ってなかったジャケットを着た岩田さんだったからだ。「ありがとうございます」と最悪な気持ちで僕は言った。本当に最悪だ。人のiphoneを拾う心遣いができるならば、手を洗えるだろう。ジャケットを着るようなやつは絶対手を洗ってくれ。岩田さんの手は便所並みに汚いのだ。

僕は悲しい気持ちで事務所に戻ってiphoneにアルコール消毒を施した。昔何かの記事で読んだ気がして、スマホと便座の汚れ度合いをググってみた。するとすぐに洗浄度検査が出てきた。ここで測られる数値は素手の場合1500以下で清潔とされる。数値が低いほど清潔という事だ。便座の数値は500くらいとかなり清潔だ。お尻がくっついたりい色々な飛沫が飛ぶ便座だが、どうやらものすごく清潔らしい。調理場のまな板に求められる基準すらクリアするレベルだ。一方でスマホはというと平均3800だ。スマホの方が7.6倍汚いということか。つまり僕は自分を被害者だと思っていたが、実際のところ親切心でスマホを拾ってしまった岩田さんの方が被害者だったということだ。3800の数値よりも岩田さんの手が汚いということは考えにくい。これは久しぶりに反省する必要がある。お礼を言った際ものすごく嫌な表情をしてしまったかもしれないと、僕はとても後悔し始めた。次会ったら岩田さんに優しい気持ちで接する必要がある。彼は被害者なのだから。おいそれと人様のスマホは拾うべきではない。拾ってくれる人は真に優しい人なのだ。

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