先日黒いボトムスを購入した。
当たり前のことだが、僕は普段ボトムスなんて言わない。スボンと言う。少しだけおしゃれを気取っているだけだ。僕は今まで普段着を買った際、足が長いアピールなのかなんなのか分からないが裾直しをしたことがなかった。なんだか僕にとって裾直しはハードルが高くて、おしゃれ番長すぎるものだ。それに多少丈が長くても思いっきり上に引っ張れば大抵なんとかなるような気がしていた。気がしていただけで、実際のところは地面と裾がスレているなんてことがあったんだ。
勇気を出して僕は店員さんにボトムスの裾直しを要求した。鏡張りの密室で二人っきりというのはいささかロマンティックすぎる。これも裾直しを頼みにくい理由の一つだろう。ボトムスの裾を折り返し、この辺りでいかがですか??と提案される。僕は「それで行きましょう」と元気よく返事をした。仕上げにまつり縫いかミシン縫いを選ぶよう迫られて困惑。うーんと考えた結果、初めての裾直しに「まつり」というのはあまりに陽気なので、質実剛健なミシン仕上げを要求する。30分くらいで完成するらしい。時間になってボトムスを受け取る。25年出来なかったことが、こうも簡単に出来てしまうことに愕然とした。
家に帰って例のボトムスを履いてみる。なんということだろう、あまりにちょうど良い。今までの僕のボトムスはダボっとしていたのだけど、裾直しをしたボトムスはそのダボっと感がなくシュッとしている。なんていうか僕の下半身がパリッとしたシティーボーイ感を演出している。苦節25年、ようやく僕は垢抜けた。おしゃれの入り口は裾直しにあったのだ。ユニクロで買い物するだけでは決してたどり着かない境地がそこにはある。垢抜けたい人はぜひ裾直しをしてみて欲しい。