87歳のフレンド

僕は同世代の友達は少ないけれど、70歳以上のお友達が結構多い。彼らはほとんど同じことしか喋らないが、そこには謎の説得力がある。その中の一人にみのるちゃんという声の高いじじいがいる。ピアノでいうとだいぶ右側の鍵盤で、歌手でいうとラルクアンシエルのHYDEだ。

最初に会った頃にみのるちゃんは軽トラの運転をしながらこんなことを言っていた。「葬式は死んだやつに会えるわけじゃないんだ。残された家族のためにあるんだから、行っても気が滅入るだけよ。だから俺は行かねえ。そいつを時々思い出してやりゃいいのよ」とこんな風に言っていた。「なんかそれカッコイイっすね。じゃあみのるちゃん死んでも俺は行かねえっすよ!」(×3) みのるちゃんの耳はほぼ死んでいるので、3回くらい全力で言わないと決して伝わらない。補聴器を持っているが充電が面倒なのでずっと家に置いているのだ。「その考え若い時から続けているの?」(×3)と聞くと「バーカ言え、昨年なんかで読んだのよ!1年前から始めたのよ!はっはっは」とみのるちゃんは高い声で言ってきた。「めちゃくちゃ最近じゃんみのるちゃん、あの言い方だと最低でも30年は続けてる人みたいだよ!!」

僕はこの87歳のじじいが昨年から続けていた習慣の話を聞いて以来、できるだけ葬式には行かないようにしようと思った。そして今朝みのるちゃんが亡くなったと聞いた。僕は話を思い出して行かないことにした。

みのるちゃんが僕に50回くらいした話に家族に関するものがある。「嫁や子供ができたらどんなに嫌がられても毎日一回は触れて、出来るだけたくさん話をしろ」ということだ。いくら愛していたとしても、直接言葉で伝えたり触れたりしないとそれは相手に伝わらないということが言いたいらしい。みのるちゃんは常々仕事ばかりで家族を大切にできなかったと後悔していた。あの世で嫁さんに謝らないといけないとも言っていた。年長者の人生へのアドバイスは大変に参考になるから聞いた方がいい。亡くなる少し前にVHS(ブイエッチエス)をDVDにしてくれって言われていたんだけど結局渡せなかった。近いうちに、お願いされたDVDとお花を持ってお墓参りに行こうと思う。

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