大学生猟師が就活中に書いていたブログ「初めての面接」

大学生の時に「ヘタレ大学生の妄想 diary」というブログをはてなブログというサービスを使って書いていた。全く普通の日常を小難しく書くというスタイルの日記だ。僕は好意的なみんなの反応が嬉しくて、週に1度は必ず書いていたのを覚えている。ブログ自体は消してしまったが、メモアプリに一部残っていたのでここに書いておく。

就職活動に悩む大学生の苦悩が凝縮されている。


僕が面接を初めて受けた時の話をしよう。

その前の日の晩は緊張感から「面接」という文字をひたすらに検索バナーに書き込んでいた。ひたすらに「面接」というワードを検索する僕はさながら、ネットという大海原を航海するマルコ・ポーロのようであった。

マルコ・ポーロは東方見聞録にて黄金の国ジパングをヨーロッパに紹介しているわけだが、僕は僕の面接という航海の途中でアダルトヴィデオを観た(約12分)。面接が舞台の問題作である。非常に参考にならなかったのを今でも鮮明に覚えている。緊張に加え極度の興奮状態に陥った僕。僕にとっての黄金の国ジパングが確かにそこにあったのだ。

朝の5時、僕は目覚ましが鳴る前に起きた。朝起きた時の口内は便所よりもさらに汚いと聞くが、そんなことはどうだってよかった。僕は白湯を飲む。温かいお湯が喉を通りぬけ、僕の決して強くはないお腹を暖めた。いつもより念入りにシャワーを浴びて、身を清める。LUSHのボディーソープは、僕の体をふんわりとした柑橘系の香りにさせてくれた。今の僕はどこを嗅がれたってへいちゃらだ。僕は服装を整え、鳥取駅に向かった。

駅内のドトールでドリップコーヒーをテイクアウトした。パラダイムシフトでコアコンピタンスがコモディティ化されたみたいな、横文字の応酬。なんだかとっても賢い感じがするだろう。早速選考での話をしよう。

僕を迎えてくれたのは、それはそれは美人なお姉さんだった。彼女はいわゆる、美人事(びじんじ)だ。彼女は僕らを控え室まで誘導した。彼女の長い髪が窓からの陽射しを踊るように弾いていた。瞳は夜空を映し出す湖面のように輝いていた。

控え室には7人の学生がいた。美人事が控え室での会話を促す。堰を切ったように喋り出す就職戦士たち。中にはファイリングした履歴書を得意げに見せる強者もいた。僕に核融合について熱く語り出す理系戦士。電子がどうだ、原子がどうだ、何の話だ。かっこいいですね、と適当に流した僕は、隅っこでひっそりと「幻獣辞典」を読んだ。控え室である以上控え目であるべきだと考えたからだ。僕はエルフの説明を見て、美人事の彼女を思い出す。間違いなく光のエルフとは彼女のことだろう。


「ますもとさん、こちらにどうぞ」


「”はい!”」


僕は僕史上最高のいい声で返事をした。

高校生の頃に合唱部の助っ人としてテナーパートを歌ってきた経験が、ここにきて初めて役立った。面接は和やかなムードで進み、僕はありのままを話した。

控え室に戻ると、なんだかそわそわする僕がいた。僕はここで不合格の可能性もある。もしかするともう2度と彼女に会えないかもしれないのだ。面接の合否など、もはやどうだってよかったのだ。入り口へ案内される途中に僕は勇気を振り絞って言った。「あの、とてもお綺麗だなって思いました!!!!」

僕は失礼しますと言い、選考会場からダッシュで逃げた。千と千尋の終盤において、決して振り返ってはいけないとハク様も言っていたから、きっとこれでよかったのだろう。

帰りのバスから見える夕日は僕を優しく照らす。今日を思い出してニヤリと微笑む僕の顔が窓に反射して映る。大変に気持ち悪いその顔は、乗り物酔いを加速させた。僕はしばらくかっこつけて、たそがれていた。夕日というスポットライトは僕のたそがれをより良いものにしてくれた(ずっと酔ってるだけ)。まあ今日くらいはかっこつけたっていいだろう。彼女に思ったことが言えたのだから。通路側に座っていたおじさんは言った。


「眩しいから閉めてくれる?」
「”はい!”」

僕はいい声で返事をした。


 

この会社は株式会社ディスコという半導体製造装置メーカーの話なんだけど、1年後なぜかこの会社は僕の履歴書のデータを就職希望の大学4年生にばらまくという愚行を犯している。

そしてなぜか僕のデータを送ってしまった就活生全員にお詫びに行くという面白い行動をとっていたんだ。僕は謝罪電話にて、面白かったから許すと言った。実際に僕の履歴書をメールを使ってばらまくという遊びは大変に魅力的だし、僕という人間を数百人の就活生に知ってもらういい機会だったように思う。僕はこの会社から見事に就職を断られているのがなお面白い。

この頃の僕はとにかく都会での就職活動を楽しんでいた。新宿二丁目でオネエの人たちに就活の相談をしたことなんてどこで話しても盛り上がる。あの時終始僕のお尻を触っていた陸上自衛隊のタクヤさんは、今でもたまに連絡をくれる。

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